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2006年5月 1日 (月)

【Holden】

Holden (ホルデン) (*):かわいい娘たち ・・・・・ もともと、holdという形容詞を名詞的に使用した形。holdという形容詞で表すことのできるものすべてを指すことになるが、つまり、これが何を意味しているかは文脈による。とにかく、かわいいもの、優美なものを指す。これによく似た単語でちっともかわいくもなければ優美でもないものがある。orz

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Als wir juengst in Regensburg waren 「ぼくたちが昔レーゲンスブルクにいた頃」というドイツ民謡がある。レーゲンスブルクというのはバイエルンのドナウ河畔にある街で、少年合唱団が有名だったりする。

Als wir juengst in Regensburg waren,

sind wir ueber den Strudel gefahren,

da war’n viele Holden,

die mitfahren wollten.

Schwarbische, bayrische Dirndel, juchheirassa,

muss der Schiffsmann fahren.

ぼくたちが昔レーゲンスブルクにいた頃

渦巻く河で船遊びをしたものだ

可愛い女の子達が

一緒に乗せてとせがんでいたっけ

シュヴァーベンやバイエルンから来た女の子達がさ、ヤッホ!

船頭さん、いっちょ行こうか!

と言う感じであろうか・・・・・

この歌はその後、高貴なクーニグント嬢がお城から降りてきて、「これは本当にそんなに危険なのですか?」と聞く。すると、船頭さん曰く「純潔な乙女なら大丈夫、純潔を失ったご婦人は死にます」と答える。で、クーニグントお嬢様は、そう言われて引き下がったら、「白状」したことになるので、「えいやっ」と乗り込んだら、水の妖精に連れ去られた(=死んだ、んでしょ)。ところが、12才の女の子は(ドイツでは女の子の14歳以上は「大人」とされた)無事に急流を下った、とかいう話になる。古い時代の女性の純潔をテーマにしたお話しだ。現代の女性の皆さんは「馬鹿にするな!」と怒るかも知れない・・・・・

まあ、こういう中身のことも意識しないでいた頃の話である。

この曲は、中身とは裏腹に、元気の良い明るいメロディが人気で、ドイツ人ならおそらく誰でも知っている。東京音頭みたいなものか。わたしもこのメロディが気に入って、1番の歌詞だけいつの間にか暗記していた(これがくせ者だったかも知れない)。

ドイツにいた頃、ある時仲間内のパーティーがあってわたしも、まだそんなに馴染みはなかったのだがちゃっかりと呼ばれていた。そしてそこで誰かがわたしに、「大学で合唱団に入ってたんでしょ?何か歌ってよ、ドイツ語で!」と言った。わたしは、じつは密かにのど自慢だったので、嫌がる振りをしながら(可愛くない)歌った。このAls wir juengst~を。

そこで、ひとつ単純な間違いを犯した。それはほんの一瞬のことだった。それぐらい見逃してくれてもええやんか、と言いたくなるくらい一瞬のことだった。しかし、これが人々の記憶に残った。多分今でも覚えられているだろう。彼らにとって、わたしは忘れ得ぬ海外からの友人と「なってしまった」と思われる。

その間違いは発音の間違い。アルファベートの12番目の「L」を発音できなかったのである。舌が空回りしたと言おうか・・・・・のど自慢ではあったが、ドイツ人の前でドイツ語で歌うので、ちょっと力んだと言うべきか。いや、それでも、その発音ミスはたったの1箇所だったのだ。ただし、狙ったようにその1箇所で。

その単語は、上記の1番の歌詞の3行目最後の「Holden」である。この「L」が発音できなかったのだ。ドイツ語がお出来になる方は、ここでせいぜいお笑い下さいませ。ふ…

Holden」の「L」がなくなると「Hoden」である。Hodenというドイツ語は確かに存在する。これは複数形であり、単数形は「Hode」だが、普通複数で用いる。この箇所を通過した途端、会場がドッと沸いた。当たり前だ。しかし、わたしはなぜそんなにウケているのかわからなかった。あるオヤジなどは椅子から転げ落ちて、幸せそうに笑っていた。ゲタゲタと。

訳がわからないまま宴は終わった。翌朝、メールが来ていた。親切に昨夜の笑いのわけを教えてくれた。『HoldenHodenに聞こえたんだよ!』

わたしは死んだ。

ドイツ語に詳しくない方も、どういう傾向の話か想像がついているかも知れない。Hodenとは、『人間などの動物の雄の後ろ肢の付け根で、嚢中に2個で一対をなす、あの物々しき存在』のことである。

では、わたしは昨夜、『レーゲンスブルクで急流下りをするときに、何故かシュヴァーベンやバイエルン出身の「Hoden」たちが、手足が生えて目玉のオヤジみたいになったのが、「一緒に行ぐ~」とかいって、沢山、わらわらと寄ってきました』みたいな歌を歌ったことになるのか?気が遠くなる。

以来、わたしはドイツ語でも何語でも「L」を極めてはっきりと発音するようになった。当然であろう。いまでは完璧だ。ネイティブの折り紙付きだ。通訳をしたとき、本当に1回だけ『「L」と「R」の発音が良い。日本人とは思えない。』、と褒めてもらったこともあるぐらいだ。1回だけだがね。

語学でも歌でも、その他のどんなことでも、上達の陰にはこのような「恥」がある。「恥」を恐れていてはいけないのだ。ま、わたしの場合は偶然だったのだが・・・・・

たまにはこんな話も書きたい樅の木であった。

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コメント

ぎゃはははは~~!!!!!

LとRですか~・・・外国語の発音は難しい・・・ですね。
あ~、想像すると滑稽なような、恐ろしいような・・・

でもその後の訓練???の成果で、ネイティブに発音を一回でもほめてもらったことがあるなんて!さすがでいらっしゃいますね!・・・意識すればできるようになるんですね!

樅の木さんの体験ほど強烈???ではありませんが、英語でも、rice(米。これは皆様よくご存知ですね。)とlice(louseの複数形・害ムシ。きゃ~)を間違って食べたりすると、?????!、という話をネイティブの英語使いさんとしたことがありました。

「恥」を恐れてはいけない!のですね!はい!恐れず恥をかき倒して上達したいです・・・・・

投稿: | 2006年5月 2日 (火) 04時12分

名無しさん(ま、わかりますけど・・・笑)、

1字違いで大違い、何語にでもありますね。
コメントされていたlice>louse に該当するドイツ語はLaus(ラウス:単)→Laeuse(ロイゼ:複)で、発音似てますね。

あと、Brei(ブらイ)=おかゆ、おかゆのようなドロドロの食べ物と、Blei(ブライ)=鉛、っていうおとろしい組み合わせもあります(^^)

投稿: 樅の木 | 2006年5月 2日 (火) 12時26分

たくさんの教訓を頂き、ありがとうございます。

教訓
①人は、それと知らずに恐ろしいあやまちを犯すことがある。
②持つべきものは良い友人である。(間違いを指摘してくれるのは有り難いことです・・・。)
③恥を恐れてはならない。
④外国語には、それらしく聞こえる発音のポイントというものがある。
⑤樅の木さんは話題の宝庫。おもろい話から渋い話題まで臨機応変、何でもオッケー。素晴らしい!

投稿: かっ♪ぱ | 2006年5月 2日 (火) 12時36分

かっ♪ぱさん、

箇条書きのコメントが新鮮です(笑)。
丁度このときは、適度にアルコールも入って喉が程よく充血していて、「良い声」が出たんですよ。よりによって。

投稿: 樅の木 | 2006年5月 2日 (火) 16時12分

この記事へのコメントは終了しました。

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