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2006年7月 2日 (日)

【Maestro】

Maestro (マエストロ)(男):(作曲・演奏などの)大家(たいか・・・・「おおや」ではない)、名人、巨匠、あるいは音楽教師。日本の合唱界で言うと、田中信昭師がそれにあたる。

今日は、10月に常陸太田で行われる東京混声合唱団演奏会でのジョイントステージのための練習があった。田中信昭先生の指導を受ける、極めて特別な日。マエストロ練習と言っても、決して言いすぎではないだろう。

27年ぶり(?)で直にお見かけする田中先生は、まだ背筋もしっかりと伸びていて、話す声も内容も力強い。指揮をしながら、どすんどすんと足踏みをなさるのは、昔のままだが、あの衝撃にも耐える肉体を未だに維持しているのは驚き以外の何ものでもない。

さて、練習で求められたのは「歌うこと」だった。自分のモティヴェーションで歌うこと。

(ここには、田中先生の言葉をそのまま書くのではなく、わたしが聞いて咀嚼した内容を書く。)

詩を読み、読み込み、深く読み込み、作者が何を伝えたいのかを感じ、それを読んだ自分が何に感動し、何を伝えたいかを明確に持っていること、そして、楽譜にちりばめられている作曲者のメッセージを読み取ること。

1曲目の後半は、最初少し聞いて頂いただけでダメが出て、9月までの宿題となっている。練習担当のT先生に「ねえ、これ、どうづる?このままひとつひとつ作ってく?」とか質問されたりした。歌い込んでいないこと、そしてそれ以前の「自分はどう歌いたいのか」ということがまだ「無い」と思われたのだろう。日本語の部分ならまだしも、この部分の歌詞は英語である。漫然と練習していたら、何となく「こんな感じだろ?」で終わってしまう。おまけに、訳詩はすでに手元にあったりするのでもうわかったつもりになっているが、訳者がこのひとつひとつの訳語にどのような思い入れを託したのか、どんな苦労をして英語にしたのかを感じ取るところまでは行っていないのが見えたのだろうと思う。

わたしも翻訳で食べている人間だが、ドイツ語でないと「読む」モティベーションが下がる。そこまで深く読み込んでいなかった。マエストロ練習に臨むためには、準備が足りなかったと思う。これは「恥」である。

次は任してんか。

練習中に頂いた言葉を思い返すと、田中先生は「モティヴェーションなく歌う」のを最も嫌われている、と感じた。そして、われわれがそれをやってしまいがちなので、それをまず強く求めておられるようだ。

「まず「感情」があり、それが表情や仕草などとともに「音声」でも表現される。それでは足りなくて「言葉」になる。その言葉をもっと表現するために歌が生まれる」

「言われたとおりにやってはいけない。言われたとおりにする人は言われたことしかやらない」

「わたしを見てはいけない。お客さんの方を見なさい(意識を向けるの意)」

「音楽は人間にとって必用なものである。でなければ、いまごろ退化しているはずだ」

「解釈は∞通りある。正解はない」

「わたしの言うことはヒントにすぎない」

「 」内は、印象に残ったマエストロの言葉であるが、もとよりこれは一言一句同じなどでは決してなく、記憶に基づくものであること、そして、その「現場」で受け取った言語情報以外の深く豊富な情報が含まれていないのはもちろんである。だから、語録みたいなものをつくるのも悪くはないが、それは「記録」としての価値であって、実際に歌う者としては、それを咀嚼して自分の血管に流すことが出来るかどうかが大切だと思う。

まず何らかの「感情」があり、それが「言葉」となり、それを「歌いたい」というモティヴェーションが生じて「歌」が生まれる。歌の起源はこうだったろうと思う。「始めに言葉ありき」というのは聖書以外でも通用する♪

われわれには、始めに歌が与えられている。下流から上流に、逆向きに辿っていくことになるのだけれど、最後お客さんの前で歌うときには上流から流れてきたものを届けたいものだと思う。

練習後、T先生が行く前に、田中先生のところに行って挨拶させて頂いた。もちろん、わたしのことなど「名前と顔で」覚えていてくださるわきゃぁないのだが(笑)、「K大学グリークラブ」、「三善先生のクレーの絵本第2集を初演させて頂いたときの学指揮です」と言ったら、想いだしてくださった。嬉しい♪

取りあえず記憶が薄れないうちに・・・・・

B.O. を「おー」で歌っていたが、音価は「Loo」で歌うこと。そして音程が変わるたびにタンギングすること。

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音楽」カテゴリの記事

コメント

う~ん、深い言葉の数々ですね。赤い字の部分、数回読み返しました。
心に、とどめておこう、と思いました。

田中先生とお話できて、良かったですね。「学指揮」と言う言葉に、ノスタルジーを感じました。私も、合唱部でしたので。

投稿: LLM | 2006年7月 2日 (日) 06時24分

LLMさん、

田中先生、お懐かしゅうございました。求められるレベルはとても高く、引き締まりました。また何か思い出したらアップしますね。

投稿: 樅の木 | 2006年7月 2日 (日) 20時07分

気持ちを切り替えて、練習に参加できて、良かったですね♪
学生時代の思い出に、今回さらに素敵な思い出がプラスされそうですね♪
それにしても、樅の木さんは、若い頃に本当に濃い音楽との関わりがあったのですねー。羨ましいです。「こういう事は若い頃にやっとかなくちゃなー」って、思っているところです・・・私。

投稿: かっ♪ぱ | 2006年7月 2日 (日) 20時16分

かっ♪ぱさん、

>「こういう事は若い頃にやっとかなくちゃなー」って、思っているところです・・・私。

まだ若い!(喝っ!)
て言うか、70才ぐらいになった時には、「あの頃頑張ってて良かったわ~」と思うことになるんじゃないですか?>今の充実振りからして。

投稿: 樅の木 | 2006年7月 2日 (日) 22時18分

練習おつかれさまでした♪

マエストロのお言葉、咀嚼して伝えていただき、ありがとうございます。感謝!です。

それに、再会の感動も味わえてよかったですね♪
樅の木さんの大切な思い入れが伝わってきて、私も嬉しくなりました。

・・・そうですよね~。音にも言葉にも、そこには必然性があって、それをいかなる解釈で聴いてくださる方々にお伝えするか・・・・・

練習には参加できずに残念ですが、樅の木さんのレポートのお陰で田中先生の仰りたいことが少し理解できたような気がします。ありがとうございます。

次回のマエストロ練習は、
「任してんか」
私もそういえるよう、楽譜をより深く読み込んで、伝えたい内容を充実させたいと思います♪

*「お」~は「LOO」で、タンギングですね。了解です!

あ~!次回がとっても楽しみになってきました♪

投稿: MUSE | 2006年7月 2日 (日) 23時57分

MUSEさん、

次回は是非参加できますように(って、マエストロ練習はあと1回ですしね)。

頂いた言葉や起こったことから判断して、マエストロは可成りご不満のようでした。休憩時間がとても長かったのですが、その間、代振りのT先生には厳しい注文が沢山出されていたと思います。

マエストロ曰く「他所ではこんな厳しいこと言ったことはなかったんですが、皆さんならば受け容れて頂けるだろうと・・・・・」これは、婉曲な言い方だったのでしょう。ホンマ頑張らないと。

「指揮者の気に入られるように歌おうとする」集団になってくれるな。自分の意志で歌う集団になってくれ、ということを言われた一日でしたね。

投稿: 樅の木 | 2006年7月 3日 (月) 08時33分

樅の木さん、

・・・・・歌うことに対し、改めて真摯な気持ちで取り組む必要があるな~、と思いました・・・

なんとなく、指揮者の気に入るように、というか、ただ指示に従うだけで、自分の中で意味を深く咀嚼せず、うわべだけで歌ってしまうことってあります。

自分の意思で、ですね・・・
はい・・・頑張ります♪

投稿: MUSE | 2006年7月 3日 (月) 12時45分

MUSEさん、

アマチュアだからと言うような妥協は一切ない指導でした。プロはこうなのか!って感じです。(歌うのは誰?あなたでしょ?)と問われていたように思います。感じたことがいろんな言葉になって出てきますね♪
確かに趣味でやっていることですけど、甘い姿勢でいたら勿体ないです。これは、いま取り組んでいるロ短調ミサについても言えますよね・・・

投稿: 樅の木 | 2006年7月 3日 (月) 13時34分

田中先生の指導、とても深いと思いました。そして、なんて幸せな練習でしょうか。羨ましいです。こんなレッスン受けてみたいっ!(熱望)

合唱のこと、その歌のことを田中先生のように考えたことはなかったなあ…。確かに、言葉は伝えようという意思が伴わないと相手に伝わらない。当たり前のことですが、合唱になると忘れるんだよなあ。

例えば、今やっているロ短。ラテン語という以前に、私は信仰が皆無だし。信仰を超えた普遍性があると確信してはしますが…。しかし、Kyrie eleisonはまだしも、amenと発声する時にいつも心にざらつきを覚えて、複雑な気持ちになりますですよ。

投稿: ううう | 2006年7月 8日 (土) 03時22分

うううさん、

東混は今年で確か創立50周年。田中先生が創立されたわけですから、50年間プロの合唱団を率いて来られたわけですよね。付け焼き刃は通用しませんね。

技術的にわれわれが東混より劣るのは、歴然とした事実かも知れませんが、自分が歌おうとする歌に共感し、それを人に伝えようとしているかどうか、というのは厳しく求められますね。

>にいつも心にざらつきを覚えて、

正直なコメント気持ちいいです(笑)。これはでも、仕方ないでしょう。

投稿: 樅の木 | 2006年7月 8日 (土) 11時26分

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