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2006年7月25日 (火)

【Wienerschnitzel】その1

Wienerschnitzel (ヴィーナーシュニッツェル) ():ウィンナーシュニッツェル ・・・・・ 小学館の独和大辞典には「仔牛のカツレツ」と出ている。ソーセージとはまったく関係ないのは明白である。

ウィンナーシュニッツェルという料理がある。ウィーンは実はわたしの憧れの街で、可能であればウィーンで老後を・・・なんてことを思ってみたりすることもあり、その街の名が冠されたものには、例外なく興味が湧くというものだ。ウィンナーシュニッツェルについては、どういうものかはおよそ耳学問で知ってはいたが、なかなか口にする機会がなかった。わたしがこれを初めて食べたのは、他ならぬウィーンだった。

在独中、1年ちょっとの間だったが或る男声合唱団に入っていたことがある。「村の合唱団」として愛されている団体で、わたしが身を寄せたときですでに130年ぐらいの歴史があったというから凄い。ドイツの音楽文化の懐の深さがうかがい知れる。同じ街には、同じくらい長い歴史のある混声合唱団もあった。この2団体は仲が悪いそうだ(笑)。「村」だからか、同質のものでかたまって、異質なものを排除する傾向があるのかも知れない。やたら徒党を組んで、別の徒党と反目するという、「お前ら中世か?」というようなアナクロな光景が、「村」に行けばまだまだあると思う。ドイツって国は。

そんな「村」の合唱団に、異質の極致「日本人」のわたしが入っていくのには、少々勇気を要したのだが、久しく歌っていなかったので、歌いたい一心で門を叩いたのだ。叩いた門は開かれた。聖書に書いている通りだ。そして、なんという偶然!その団体は可成り上手い団体で、コンクール優勝および入賞の常連だという。そして、入団して数ヶ月で、わたしは「シューベルト国際合唱コンクール」に出場するために、団のオッさんたちと一緒にウィーン行きの貸し切りバスに乗り込んだのだった。

この時のことはそのうち詳しく書くとして、そうして向かったウィーンでわたしは初めてウィンナーシュニッツェルを食したのだった。

それは、コンクールの歓迎レセプションの始まる前に、あれは確かウィーン市役所の地下のレストランだったと思う。そこでドイツのオッさん達(田舎もん)約80名がぞろぞろと入っていったのだが、レストランの方はそう言うのは慣れっこだったようで、まったく狼狽えることなく対応していたのはさすがであった。

何がさすがかというと、注文の取り方だ。ボーイ(Herr Ober)が、われわれのテーブルにやって来て言った最初の言葉は、「何かの行事で?」。誰かが「そうやねん。コンクールのレセプションやねん」と答えたら、それに対して、「おそらくあんまり時間ないですね?全員Schweineschnitzelで良いですか?」と来た。テーブルに仕切り役が「おい、お前ら、それでいいか?いいだろ?ベジタリアン居てるか?」、「それでいーよ(全員)」。それでオーダーが済んでしまった。阿吽の呼吸というべきか・・・・・

さて、ここでHerr Ober すなわちボーイさんは、Schweineschnitzel (シュヴァイネシュニッツェル)と言ったのだ。これは「豚のカツレツ」と言うことになる。そして、運ばれてきたのはまぎれもないウィンナーシュニッツェルだった。でっかい、ひらひらのが2枚、半分皿からはみ出している。ウィーンではウィンナーシュニッツェルのことをウィンナーシュニッツェルと言わないでシュヴァイネシュニッツェルと呼ぶのだと言うことがわかった。

そりゃそうだ。考えてみれば、ウィンナーコーヒーだって、ウィーンで注文するときはメランゲと言うのだと、どこかで読んだ記憶がある。多分諏訪功さんの著書ではなかったかな?そして、その翌日の自由時間にひとりでウィーンのカフェーハウスに行ったときに「メランゲ(メレンゲじゃなくて)!」とやってみたら、しっかり通じている。

ウィーンのものを「ウィンナー ~~」と呼ぶのはウィーン以外のことなのである。と言うことは、ウィーンでドイツ風のシュニッツェルを食べようと思ったら「ドイツ風豚のカツレツ (Schweineschnitzel nach deutscher Art)」とでも言わなければならないのだろうか?で、「当店では出来ません(ちょっとあんた、ここはウィーンやで!)」とか、あっさり言われたりする???

(つづく - Fortsetzung folgt!

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コメント

樅の木さん、エッセイおかしすぎ。爆笑しました。とくに関西弁を話すドイツ人。ドイツ人と関西弁がこんなにしっくりくるなんて・・・大発見です。昔、だれかが「名古屋は日本のドイツだ」と言ったところ、名古屋の人が「いや、ドイツがヨーロッパの名古屋だがね。」と言ったという話を聞きました。でも、名古屋より関西のほうがドイツに合うかも。

投稿: ありちゅん | 2006年7月25日 (火) 23時47分

名古屋とドイツっていったら、真ん中辺にあるというぐらいでしょうか、共通点?ま、わたしは名古屋のことよく知らないので、なんとも言えませんが。

わたしが通訳になっていたら、こう言うことになっていたのですな。オリバー・カーンを関西弁に訳すと、しっくり来ると思います。彼はカールスルーエ出身で、彼の「訛り」は耳に覚えがあるのです。

投稿: 樅の木 | 2006年7月26日 (水) 09時46分

ワタシ、実は大阪の前は名古屋に住んでいました。ほどよく都会、でも自然が多く残っていて緑も多い。大都会という自負はあるけれど、心の片隅にちょっと屈折したものもある。そんなところが似ているように思います。

ところでサッカー選手の訛りって、聞いていると面白いですよね。興奮してくるとお国言葉が出てきちゃったり。

投稿: ありちゅん | 2006年7月26日 (水) 12時19分

ありちゅんさん、

転勤族でいらっしゃったのでしょうか?
名古屋は東山公園ってところに行ったことがあります。うん、綺麗なところでした。

カールスルーエ近辺の訛りで、「極致」と思ったのが、Ge ma do no!でした。これを、標準ドイツ語に訳すと・・・・

Gehen Sie mal dort hin!
なんですと!

投稿: 樅の木 | 2006年7月26日 (水) 12時30分

樅の木さん、こんにちは。

今ごろすみません。僕も全然認識していなかったんだけれど、最近、初級ドイツ語テキストの教師用虎巻を見ていたら、こんな記述が:
"Wiener Schnitzel": ein Stück paniertes Kalbfleisch ("Schnitzel nach Wiener Art" ist dagegen Schweinefleisch.)
ヴィーナー・シュニッツェルは子牛肉でヴィーン風シュニッツェルは豚肉!
絶対的に信用していいのかどうかは分かりませんが、Langenscheidt が出している本なので、そんなにインチキでもなさそう。

投稿: takuya | 2006年12月10日 (日) 11時19分

takuyaさん♪

あらら、そうなんですか?
確かに、小学館には仔牛の~と載っていますしね。では、われわれドイツのオッさん合唱団は、「早く片づく」ほうほうで処理されたということでしょうか?

でも、まだ疑問が。WienerはそれをWienerschnitzelと呼ぶのかな?

投稿: 樅の木 | 2006年12月10日 (日) 18時14分

Wien, Gasthaus で適当に検索して行き当たったプラーター近くの複合施設の中のレストランのメニュー。
http://www.kolarik.at/downloads/Speisekarte.pdf
いきなり「食い気がある」ってのが大傑作なんだけれど、この中に、Wiener Schnitzel は(別の名前でも)出てこないものの、Schnitzel "Wiener Art" はあります。そしてこれは確かに豚肉。

投稿: takuya | 2006年12月10日 (日) 22時03分

takuyaさん♪

行ってみました、リンク先まで。
「食い気がある」って、Mahlzeitの翻訳のつもりなのでしょうか?(爆)

ここでは、豚ですね。これはもう、つまり、向こうでも諸説があって、何が本家本元なのかもはや特定できないのではないでしょうか。または、SchnitzelのWien風の肝は「薄く開く」ところにあって、肉は何でも構わないのではないかな?

それはそうと、あの写真のSchnitzel Wiener Artですが、明らかに「ひらひら」が2枚ありますね。皿からはみ出しそうなのが。衣好きには堪りませんねぇ…

投稿: 樅の木 | 2006年12月11日 (月) 12時45分

Mahlzeit なんでしょうね。Guten Appetit とかここらへん、われわれ、尋ねられると無理やり「召し上がれ」なんて日本語を教えたりしますけれども、普通は日本では言わない。それにしても「食い気…」ってのはスゴい。

Wiener Art が豚ってのはLangenscheidt の教科書の説明と平仄が合っているんですよ。ともかくもウィーンで「ウィーン風」という名称が使われていることは確認できた。もうちょっと他の店のメニューも漁ったら、Wiener Schnitzel も出てくるかもしれません。

大皿を覆い隠すように馬鹿でかいシュニッツェルも時々目にしますね。

投稿: takuya | 2006年12月11日 (月) 13時41分

takuyaさん♪

ん?あ、ちっともよく読んでなかった (^^;)

そう言えば、「ウィーンの甘い戦争」。あのデーメルとザハーホテルの。あれで確か、上に乗っけるチョコの形を丸型にするのと三角にするのでお互いを差別化するというところでケリが付いた云々という話がありましたね。

肉が仔牛か豚かで、呼び名を変えるという差別化がなされても不思議ではないですね。

投稿: 樅の木 | 2006年12月11日 (月) 16時40分

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