« 【Schlaraffenland】 | トップページ | 【Segantini】 »

2007年1月 6日 (土)

【Betrunkenheit】

Betrunkenheit (ベトルンケンハイト)():酒に酔った (酩酊) 状態 ・・・・・ 酒に酔うと大抵の人は、普段しないことをし、言わないことを言ったりする。酒を飲んでも普段と変わらないと言う人もいるが、それは普段が酩酊状態と変わらないからなのかも知れない。

* * * * * * * * * *

人間、何十年も生きていると、酒の上での失敗のひとつやふたつはあるものです。世間におわす豪傑の皆様と比べると、わたしなどのエピソードは、エピソードと言うのもおこがましいほどのものですが、この時期になると思い出す出来事がいくつかあります(某SNSで少し書いたことですが)。

1月だったか2月だったか、とにかくそれは冬のことでした。わたしは、あることで東京にやって来て、翌日の行動を考えて都内のホテルを予約しました。と言っても、安ホテルです。大井町駅前にある、某関西私鉄の名を冠したホテルで、料金は当時で5000円余で、部屋は本当に寝るだけの部屋でしたが、最上階の大浴場が気持ちよくて、東京に泊まるときはよくここを予約していたのでした。

その日もわたしはその某関西私鉄の名を冠した大浴場付き安ホテルを予約しました。そして、友人「K」と一緒に自由が丘で飲みました。先にホテルにチェックインしておきたかったのですが、時間的に上手く行かないので、少し大きめの鞄ひとつと共に、友人「K」と落ち合いました。

前から約束していた「飲み」で、なかなかに盛り上がり、何よりも「車ではない」上にホテルは電車で1本というシテュエーションが手伝って、大いに飲みました。ビール、日本酒、ワインと3種類までで止めておきましたが、もう充分酔っぱらい、友人「K」と自由が丘駅のホームで別れ、わたしは、大井町行きの電車に乗り込みました。そこまでは、友人「K」も記憶しています。わたしは確かにあの日あの時、大井町行きの電車に乗り込んだのでした。

「もしもし、終点ですよ。」

車掌さんに揺り起こされて、わたしは飛び起きてホームに出ました。電車に乗り込んで席について、それからたった今揺り起こされるまで記憶が消えていました。が、とにかく終点に着いたのでホームに出ると、そこは見知らぬ駅のホーム。「鷺沼」と書いてありました。

(あ、寝過ごして反対側に行ったらしい!)

その手の話はよくあります。珍しい話でもありません。わたしは、また電車に乗り込んで元に戻ろうと思いましたが、車掌さんがわたしを止めるのです。

「あ、あの、乗り越したみたいなんで、差額払いますから戻らせてくださいよ。」

「お客さん、もう終電ですよ。電車、動きませんよ。」

(え゛?)

「お客さんどこへ帰られるんですか?」

大井町・・・」
「え゛?」

後で、地図を見て驚いたのですが、どうやったら自由が丘から大井町行きに乗って鷺沼なるところに辿り着くことが出来るのでしょうか?その時わたしは、「鷺沼」がどこにあるのかも見当がつきませんでした。駅員から追われるままに外へ出て、タクシー待ちの行列の人に聞いてみました。

「あの、ここどこですか?」

「は?ここ?鷺沼ですけど?」

鷺沼ってどこにあるんですか?大井町は遠いですかね?」
「大井町ぃ?」

列に並ぶ人達の肩が震えていたのは、きっと寒さのせいでしょう。そうです。とても寒い夜だったのです。自分がどこにいるかわからないと言うのは、これほど心もとないものなのかと、わたしはひとつ賢くなりました。呆然としているわたしに、そのとき怪しげな男が声をかけてきました。

「大井町へ帰るんですか?」
「ええ、そうなんですけど・・・・ここはそのぉ、地図で言うとどの辺にあるんですか?」

「車の中で地図見せてあげますよ。あの、大井町まで5000円でどうです?」

彼は客引きのタクシーでした。駅のロータリーに入る資格がない、登録していないから、あそこで客引いてるんだと言っていました。多分、あの時間帯、わたしみたいなのが毎日何人かは居るだろうと思いましたが、確認する気にはなりませんでした。車の中からホテルに電話を入れました。まだチェックインをしていなかったのです。

「え?鷺沼にいらっしゃるんですか!・・・・・あのぉ、・・・・・無理してチェックインなさらなくても良いですよ。」

と、ホテルマンは言ってくれましたが、明日の予定なども考えると、大井町まで戻った方が良さそうでした。ホテル代金と同じ金額を払ってホテルに帰ると言うのも、滅多に出来る体験ではありません。こう言うときは「滅多に出来ないことを体験出来た」とポジティブに考えるしかありません(しかし、わたしは後年また酒に酔って「滅多に出来ないこと」を体験するのですが)。

「いや、お客さん、わたしもあんまり安くしたら困りますけど、ひと晩待って客なしじゃあダメなんで、少しは安くするんですよ。鷺沼から大井町まで5000円だったら安いはずですよ♪」
と、運ちゃんは言っていましたが、これが本当に安かったのかどうかは、精神衛生のため確認していません。もし、ご存知の方がいらっしゃっても教えないで下さい。それにもう、前世紀の出来事なんですから、タクシーの相場だって違っているでしょう。

ホテルに着いたのは午前2時頃でした。楽しみにしていた最上階の展望大浴場もすでに閉まっていました。わたしは、缶ビールを飲み直して眠り、そして翌朝、大浴場の朝風呂を満喫し、汗を流してスッキリして、そして心に誓いました。

(今度「K」と飲むときは、大井町で飲もう・・・・・)

|

« 【Schlaraffenland】 | トップページ | 【Segantini】 »

エッセイ」カテゴリの記事

コメント

樅の木さん
酔って記憶がすっぽり抜けていることって、ほんとうにありますよね。あれはなんとも恐ろし~気分になりますす。
一方で、昔のことをよくこれだけありありと覚えていらっしゃいますね。おかげで読者としましてはとっても楽しく読ませていただきました。

「滅多にできないことを・・・」は、私も、予期せぬことが起きた時はこれを信条として行動しております。(こればっかりだったりして!)。

スパム、大変ですね。流しているヤツのことを考えるとム~っときますね。良い対処法がみつかりますように。

投稿: あむ | 2007年1月 7日 (日) 13時34分

あむさん♪

わたしの場合、起きている限り記憶が消えていることはない、なかったと、思います(笑)。しかし、この時は、電車の座席に腰掛けて、次のシーンが車掌さんでした。おとなしく眠っていたんだと思います、思いますよ。(-.-;)

忘れたいことほど、記憶から出て行ってくれないものです。まあ、わたしの場合、たびたびこの話で笑いを取っているという事情もありますが。呵々。

あむさんも、昔は酒豪だったとか?Schlaraffenlandでお会いしましょう♪

スパムですが、コメントを承認制にしてからは一度も来ていません。まだ、1日経ったぐらいでは何とも言えませんが、もしかしたら効果があるのかも?

投稿: 樅の木 | 2007年1月 7日 (日) 15時41分

樅の木さんのブログで懐かしい自由が丘や大井町の名前を見るなんて・・私●●年前独身謳歌している頃自由が丘近くに住んでいました。樅の木さんにとっては苦い懐かしい名前でしょうね。私にとっては青春そのもの。大井町には友人がいたので良くちょっと上品な焼き鳥系のお店で飲みました~。自由が丘は住んでる所からミニバスが運行されてましたからいつも利用する最寄駅。大きな楽器店があって楽譜やレコード探したりエレクトーンなんぞ個人レッスン受けに通ってました。
田園都市線・・たぶん樅の木さんは自由が丘ー大井町へ行きそのまま眠っていて電車は大井町ー鷺宮まで折り返したのでしょうね。かく言う私も経験者。自由が丘通り過ぎてかなりの田舎の駅でハッと気がついた・・鷺宮あたりだったかもしれません。ただ私は帰りの電車がまだあったんで長いこと待って乗りました・・。その頃まだ渋谷ー二子玉川線は開通してなくて渋谷からは東横線で自由が丘乗り換えでしたから大井町ー鷺宮は田園都市線直通でした。たぶん樅の木さんもその頃と推測いたしますが・・。知りたくないそうですが当時としてもタクシー代5000円は絶対安いです。

投稿: ろこちゃん | 2007年1月 8日 (月) 12時25分

も、もみさま…このお話、何度読んでも笑えます。初めてこのお話を(某所で)拝読させていただいたときは、ツボにはまりすぎて、おなかの皮がよじれるほど笑ってしまったものです。なんでだろう、なぜこれほどまでにおかしかったのでしょう…
私が大井町育ちである、ということと関連があるかもしれません。保育園のころから20年近く大井町で暮らしていましたので…樅さまが大井町にこんな思い出があるなんてびっくりすると同時にやっぱり、大井町にむかっていて鷺沼についているということは、そんじょそこらの人間のできる技ではない、と今でもやっぱりそう思います。さすが、です。

今年もよろしくお願い申し上げます。ぺこり。

風邪ひきっぱなりしで仕事なんてもうしたくないコスズメでした。

投稿: spatz | 2007年1月 8日 (月) 13時14分

ろこちゃんさん♪

あれま、自由が丘にお住まいでしたか!
わたしのこの大井町深夜のカムバック事件は、ぎりぎり10年前ぐらいかと・・・・・ニアミスはなかったかも知れませんね。

この一連のデキゴトでわたしに「鬼門」として認定されたのは鷺沼です。自由が丘にはそんなに苦い思いはありません。ただし、大井町はこの話の1~2年後、再びあることをやらかしてしまったので、「夜の大井町」も鬼門認定が下りました。orz

ここではない某所で知り合った鉄分の濃い方の見解では、自由が丘から、大井町に着いて、起きないで反対側の二子多摩川に着き(そしてもう一回大井町ー二子玉を往復したのかどうかは謎)、電車が田園都市線にスイッチして最終鷺沼行きになったのではないか、とのことです。中央林間行きでなくて良かったと、ポジティブに考えるようにしています。(^^;)

投稿: 樅の木 | 2007年1月 8日 (月) 13時53分

spatzさん♪

おや、風邪治らないんですか?ウチのWeibchenも年末からずっとゲホゲホやってます。お大事に(^o^)/

ろこちゃんさんのコメントへのレスにも書きましたが、車両が鷺沼行き最終に切り替わるまでに、大井町ー二子玉を何往復していたのか、していなかったのか不明です。
でも、飲み始めが17時頃で、看板まで飲んでいたので、かなり酔っていましたね。往復はしていなかったかも知れません。単純に、自由が丘→大井町→二子玉→鷺沼と移動しても、電車が走っている時間だけでも正味45分ぐらいかかる筈なので(実は可成り真剣に真相究明に努力した)、待ち時間を含めたらそれだけでも電車に乗ってから1時間以上は経過しているはずなので・・・・・

投稿: 樅の木 | 2007年1月 8日 (月) 13時59分

じゃあ、やっぱりオフ会の開催地としては(いつやるんだ?)は、みんなに思いで深い、大井町、で決定ですね。

投稿: spatz | 2007年1月 8日 (月) 14時13分

spatzさん♪

渋すぎるのでわ?>大井町

皆さん国際ブックフェアなど行かれるのかな?

投稿: 樅の木 | 2007年1月 8日 (月) 18時46分

ははは~おもしろい!樅さん。。
ドイツ語で確か”よっぱらい”ってkaterって言いません? ”筋肉痛”とかもmuskelkater・・、猫っていう単語をよく使いますよね。他にも何かあったはず・・。あれ、なぜなんでしょうね。なぜ、猫なんでしょうって、読みながらふと思いました。

投稿: mihana | 2007年1月 9日 (火) 02時19分

mihanaさん♪

こんにちは。
Katerは二日酔いですね。二日酔いになっている人のことも言うかな?(知らん)
このKater、わたしも(なんで猫やねん?)と思って知り合いのオッさんに聞いてみたところ、「これは
Katarrhから来てんねん」と言うてたのを思い出しまして、Wikipediaで検索するとそんなことが書いてありました。19世紀に学生がおちゃらけで言っていた言葉のようです。響きが似ているからでしょうか?MuskelkaterのKaterもこっちなのかなと思います。

あ、それから、上にも書いてあるような事情なので、mihanaさんが書いておられたメアドのリンクは非表示にさせて頂きましたので♪

投稿: 樅の木 | 2007年1月 9日 (火) 09時10分

ぜ~んぜんニアミスなしでしたね。もっと時代は前かと勝手に想像していました(^o^)私がいた頃は田舎だと思っていた鷺宮ももうすっかり都会でしょうし、二子玉川だって遊園地と高●屋があるだけのような町だったけど今じゃとんでもない・・ですものね。今や私は自由が丘でさえマップなしでは歩けない・・妹にはおのぼりさんみたいと笑われています・・・(;_;)
私の敬愛する某教授はこよなくお酒を愛する方なのですが、自転車に乗って帰る途中ころんだついでに朝まで道路で寝ていたそうです。しかも寒い時期に。それからはとにかく家まで帰ることを肝に銘じて呑んでいるそうです。[自転車も「呑んだら乗るな」で、道路交通法違反になりますよね。]

投稿: ろこちゃん | 2007年1月 9日 (火) 12時53分

ろこちゃんさん♪

ニアミスはなかったようですね。もし、わたしが飲んでいた居酒屋で居合わせていたらどうしようか?と思ってしまいましたが。

しかし、その教授さんも豪傑でいらっしゃいますねぇ。そういう体験をしても「呑むのをやめよう」にならないのが酒飲みなんですな^^;

自転車の交通違反、結構罰則キビシイですよね。最近知ったのですが驚きました。たしかに危ない自転車乗りもいますからね。

投稿: 樅の木 | 2007年1月 9日 (火) 13時23分

大昔25年程前、京都の四条あたりから深夜タクシーで当時の住処
西淀川区(川を渡ればそこはもう尼)迄帰った時で7000円切る
位だった覚えが。。。。
まけてもらって5000円、樅の木さん、やりましたね〜〜〜、w。

投稿: まり | 2007年1月12日 (金) 19時15分

まりさん♪

京都ってそんなに近かったですか?25年前とは言え10000円以下はOKですね♪
まあ、この件については「安かった」と言うことにしてます。そう言ってくれる人がほとんどですし(^^)/

投稿: 樅の木 | 2007年1月12日 (金) 22時10分

この記事へのコメントは終了しました。

« 【Schlaraffenland】 | トップページ | 【Segantini】 »