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2011年4月14日 (木)

【Halbwertszeit】 半減期

Halbwertszeit

ハルプヴェアツツァイト女性:半減期 …… 放射性核種あるいは素粒子が崩壊して別の核種あるいは素粒子に変わるとき、元の核種あるいは素粒子の半分が崩壊する期間を言う(Wikipedia)。

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 今回の原発事故を契機に、反原発の動きが強まっているが、原発への反対運動は今に始まったことではない。ずいぶん前から至るところでいろんな形で反対運動は起こっていた。

 打ち明けて言うと、わたしは少々冷めた目で見ていた。それは、対案のないままのヒステリックな反対を見聞きすることが多かったと言うこと、いわゆる住民エゴともオーバーラップして素直に共感できないと感じることが多かったこと、そして原子力の怖さについての理解が不足しているように思えたことなどがその理由だった。

 火力発電は、まだ地球温暖化が言われていなかった頃から、公害・スモッグなどと結びついて、やはり歓迎されていなかったと思う。では水力はと言うと、ダムの建設で生態系が破壊されるとか、公共事業のばらまき政治などとも絡んで懐疑的な声も結構あった。それはすべて事実であるのだが、そういう反対運動をしている人たちを見て、(この人達はただ反対したいだけなのではないか?)と漠然と感じていて、共感できなかった。原発にしても、対案もなく客観的な理解もない、底の浅い反対意見を言うひとが周囲にいて、わたしは別に推進派ではないのだが一緒に肩を組んで反対する気にはなれなかった。

 理解が乏しいというのは、原発でも広島や長崎の核爆発と同じことが起こると思っているひとが少なからずいたことを主に指している。科学的(あるいは化学的)にそれはあり得ないと説明されても、その説明を聞くことすらできないひとが結構近くにいたりして、げんなりとしていた。説明を聞く=推進派、と言う図式が頭の中にあったのかも知れない。ほとんどカルト宗教のような感じだ。もちろん、原発が危険なことに変わりはなく、反対するべきものではあるのだけれど、同じ土俵に立ちたくないと思っていた。

 仕事の関係で多少原子力について調べなければならないことがあったので(ずいぶん前)、ある時少し詳しく調べてみたことがあった。その結果、原子力の、あるいは原発の何が恐ろしいのかがほんの少しだがわかった。

 放射線に被曝してDNAが破壊されると言うことだ。

 ただし、人間の身体にはDNAの修復能力がある、そしてその能力はすごい頻度で発揮されている。Wikipediaから引用する:

DNAの損傷は、細胞内における正常な代謝の過程でも1細胞につき1日あたり50,000500,000回の頻度で発生し、また、様々な要因によりその発生頻度が大きく押し上げられることもある。

細胞1個につき、1日に少ない方の50000回だとして、これを24で割り(/hour)、60で割り(/minute)、さらに60で割って(/second)みて欲しい。1秒当たりの損傷回数は、0.6弱(震度みたいだが)という数字が出たと思う。これが500000回なら1秒に6回弱と言うことになる。細胞1個でだ。人間の身体に細胞がいくつあるか、暇な人は数えてみて欲しい。

このDNAの損傷は正常な代謝の過程でもこれだけあるという。人間の身体のDNA修復能力はたいへん高いのだ。そしてまた、こんなに頻繁にDNAが壊されているのなら、何らかの理由で修復機能が損なわれたり、損傷数がキャパを超えたりすると、損傷を受けたまま細胞が増えて行くと言うことだ。

放射線被曝すると、このDNAの損傷が起こるので怖い。広島や長崎の原爆被害の写真などを見て、原発とあの全身火傷の惨状とを結びつけてしまっている人もいるかも知れない。しかしあれはあくまでも爆発時の熱による火傷であって、放射線被曝のもたらした被害とは言えない。

一般では、「放射線被曝する恐れがある」とか、「放射能がある」とか言うと、ショートカットで「怖い」、「危ない」となってしまっているケースが多くはないだろうか。何故怖いのかと聞かれて答えられない人も居るかも知れない。むしろ、「何故怖いのか?」と聞くことの方が「不謹慎」とお叱りを受けそうな気がしないでもない。しかし、「何がどう怖いのか」を正確に把握しておくことで、問題に直面した時の態度も大きく変わる可能性があるとわたしは思う。

ところで、この記事の表題の「半減期」だが、テレビなどでヨウ素の半減期について説明されていたことを覚えている人も多いだろう。多くは、ヨウ素の半減期は短いので(8日)それほど心配しないでもetcという論調であったと思う。これについてはおいておく。

然り。しかしウランの半減期はとてつもなく長い。核燃料に必要なウラン235の半減期は約7億年だそうで、安定性の高いそして地球上のウランの大部分を占めるウラン238は半減期が45億年だそうだ。地球の年齢は約45億年とする説があるが、そうであれば、地球が誕生したころウラン238は、ちょうど今の倍の量あったことになる。ウランよりも半減期が短いと言われるプルトニウムでも24000年かけてやっと半分になる。そして同じ時間をかけてさらに半分になるのだ。

アキレスと亀という話をご存じだろうか? あの場合、アキレスは永久に亀を追い抜けないことになってしまうのだが、実際は違う。放射性物質も1/2そして1/2と減っていくなら、永久になくならないことになってしまいそうだが、実数があるのでいつかはなくなる。ただ、多分、待てない。

こういう物質が使用済み燃料棒に入っている。これをいくら地中深くに埋めるとしても、それで本当に安全なのか? こんな天文学的な長い期間が過ぎてもまだ存在し続けている放射性物質が1箇所にかたまっていること、そしてそれを防護するはずの容器がそんなに長い間劣化せずに残っているのかどうか。原子力や原発について不安視するなら、むしろこういう面に対してではないのか。そういうところに目が向いていないと、議論の争点が「代替エネルギーが確保できるかどうか」というところに流れて行き、結果いなされてしまったりするのだが、本当はそれが問題なのではなかった。

(続く)

参考リンク(Wikipedia):

DNA修復

ヨウ素131

文献:

ドイツの森番たち(集英社)1996

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コメント

禿同です。私も原発には反対だし、それに代わるクリーンで安全な発電技術が早く一般化してくれるといいなーと心から思っています。ただ、今の「反原発=正義」という短絡的な主張には抵抗を感じます…。反原発に即賛成しないと、すなわち悪みたいな。もっと冷静に考えようよーと叫びたい気分です。。。ドイツは原発を止めた分、フランスから電力を買っていますが、その電力は原発で作られたものですよね。しかも、好天続きなら停電にならずに何とかやりくりできるけれど、ひとたび天候が崩れるとたちまち電力が足りなくなるってネットのニュースで読みました。環境先進国のドイツでも、やはり原発に依存していた部分はあるんですよね…。

投稿: ありちゅん | 2011年4月14日 (木) 17時32分

ありちゅんさん♪

ヒステリックに原発反対している人も、家庭では原発で作られたかも知れない電力を使って生活しているのがなんとも…… 始めに廃止ありき、と言うのは対策でも何でもないですよね。そして電力が足りなくなったら、きっと同じ人が「何とかしろ!」と騒ぐんだろうな、とか思っていました。反対サイドは対案を考えようとしないし、推進サイドも取り合おうとしていなかったと思います。

投稿: 樅の木 | 2011年4月14日 (木) 20時21分

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