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2016年5月21日 (土)

Umleitung 【迂回】

Umleitung(ウムライトゥング)(女):迂回 …… この単語を覚えたのは、工事現場で道路が通行止めになっているところに「Umleitung」の看板が掛けられていたのを見たことに遡る。Umleitungという単語を知らずに運転していたことになるが、状況を見ればこれが何を意味しているのかが理解できた。家で辞書を引いて裏を取った。こういう勉強の仕方もあることはある。

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 迂回するのは自動車だけではない。物事の進め方が実質迂回に等しいという状態になることもあるし、金(Geld)が迂回することもあるらしい。
 翻訳者も迂回という現象と関わり合うことがある。これはむろん関わらない方が無難だ。わたしはそれを、迂回注文と呼んでいる。
 わたしの仕事のフィールドは独日の実務的な翻訳である。仕様書や取扱説明書、あるいはウェブサイトの翻訳や、ハードウェアやソフトウェアのUIUユーザーインターフェース)などが多い。これらは独日翻訳なので、「日本の企業 → 日本の翻訳会社 → 樅の木」というルートで受注するか、あるいは、「国際展開するドイツ企業の本丸 → ドイツの翻訳会社 → 日本の翻訳会社 → 樅の木」というルートでも受注することがある。後者は、中間搾取が1段階増えるのと、為替の影響というものもあり、レートは安めになるが何とか値段は通している(と思う)。
 独日翻訳であるから、ドイツか日本の取次が間に入るというのが健全な状態であり、考え方だ。しかし、独日翻訳のジョブが、ドイツ語とも日本語とも関係のない第三国経由で発生することがある。これはすなわち、物価が安い第三国を通して注文すると安く付くだろうという安直な考え方に基づくものと思われる。実際のところどうなのかは、このような取引の経験がないので正確にはわからないのだが、それでもしばしば送られてくる引合のメールを読むとそのような事情が伺えるし、そもそも想像に難くない(笑)。
 わたしは複数のディレクトリに自分の情報を載せている。これは公開されている情報だ。その内容を見ての引合が来るのだ。日本の企業が最も多いのは当然だが、海外の企業からの引合もある。多いのは中国、台湾、香港などだが、他にもマレーシアやフィリピンなどからもたまに来る。これらの国々には日本語を使える人材もいるだろうから、そういう人たちがディレクトリを見てめぼしいところをリストアップするのだろうと考えている。たまにはドイツ語圏およびドイツ語圏外のエージェントから引合が来ることもある。この場合、日本人でしかないと思われる名前の担当者と、図らずも英語でコレスポンデンスを行うことになって少し気持ち悪い(爆)。
 翻訳物の品質を第一に考える企業であれば、ドイツ語か日本語のネイティブに任せたいところだろうと思う。日本語に訳すなら、常識的には日本人に依頼する。そしてエージェントも日本企業であるか、少なくとも担当者が日本人でなければならない。翻訳会社のスタッフの誰もが、ソースランゲージもターゲットランゲージも知らないような会社に(=翻訳とチェックをネイティブに任せて、自分たちは何もわからなくても良しとする、すなわち横流し得意のブローカー)、自社の翻訳物を託すというのは、要するに翻訳物の質などどうでもよく、安さだけが興味の対象という姿勢の企業であると言うことだ。そういう企業の仕事を請ける翻訳会社も似たようなものだと思う。そういう相手と取引をしても仕事の充実感というものは味わえない。儲かれば良いというのであれば、仕方ないが、本当に儲けたければ、自分の翻訳の質を上げて良い条件で仕事を貰えるように努力するのが正道だ。このような、迂回注文するような企業の場合、必ず値段も叩く。正当な額を払う用意があるのなら、ネイティブに任せる筈だからだ。とにかく実績を作りたいという駆け出しの翻訳者さんなら、このような相手も多少利用価値があると思うが、長い付き合いはしない方が良い。

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