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2016年6月19日 (日)

Fortschritt 【進歩】

Fortschritt(フォルトシュリット)(男):進歩 …… 人もモノも皆進歩する。マイナスの進歩というものもあるかも知れないが大抵はプラスの進歩だ。語義は歩みを前へ進めること。

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先日新しいプリンタを購入した。EPSONEP-808AWという機種だ。これはおそらくどの電気店に行っても、EPSONの目玉商品として展示されているのではないかと思う。いくつかある製品と比較してみたが、最も手頃な複合機だと思う。プリントアウトも、スキャンもカラーコピーもこれ1台でできる。この、「複合機」という代物は今では当たり前のように供給されているが、わたしが駆け出しの頃はそうではなかった。


わたしがフリーランス翻訳者の看板を上げた2002年頃は、複合機などというものはまだ普及していなかった。1990年代の前半には、複合機の端緒となるコピー+ファックス機能のついたものが登場したと言われているが、SOHO(これも死語の世界に入ったか)と呼ばれる形態で働く個人事業主の多くは、PCの他、プリンタとスキャナをそれぞれ別個に持ち、コピーはコピーショップかコンビニで行うというのが多数派だったのではないだろうか? まあ、わたしがローテクだったということもあるだろうが。特に看板を上げた2002年から、専業でやっていけるようになった2004年までの間は、懐がハイテク化を許さなかった。

専業でやっていけるようになってからも、プリンタは必需品だったが、カラーコピーとスキャンは使用頻度が少なく、しばらくは、プリンタを持っているだけの状態が続いた。それから中古のスキャナを一応買ったが、特に活躍の場はなかった。そしてそのまま時が過ぎ、20115月に母が寝付いたこともあって、ついに帰郷した。そのときに初めて複合機と言うものを買ったのだった。SOHOとしてはずいぶん遅い複合機デビューだった。


複合機を使えば何がどう便利かということはむろん知っていた。驚きではない。しかし、実際に使ってみた感想は、(なんでもっと早よ複合機にせんかったんや?)と言うものであった。使うべき時は思い切りよく金は使うという主義ではあったが、複合機の購入は逡巡していた。専ら使用するのはプリンタ機能であり、そのためには昔から愛用のLexmarkのプリンタが逝ってからという考えが根を張りすぎていた。しかし、Lexmarkのインクカートリッジは割高なので、コストパフォーマンス的にも早く複合機にしておけば良かったのだ。


わたしが初めて買った複合機は、EPSONEP-704Aという機種だった。価格は10000円程度。たったの10000円でこの便利さか!と、ずいぶん時代遅れの感慨に浸った。そして、それから5年、この複合機を使い続けてきた。わたしはドイツ暮らしが長く、ひとつのものをいつまでも大事に使うというドイツ人のモノとの関わり方にシンパシーを感じていた。なので、この5年間に新しい製品が登場したという情報が頻繁に入ってきても、買い換えの誘惑とずっと戦ってきた。今年の年頭に、印刷汚れが激しくなった。ヘッドのクリーニングをしてもまたすぐに印刷汚れが出るようになった。修理するか(知人には自分自身の満足感以外はほとんど意味がないと言われた)、毎回ヘッドクリーニングを繰り返してもう少し粘るか、などと考えている内に、インクが3色同時になくなってしまい、ヘッドクリーニングもできない状態になった。これを機に、ついに新しいプリンタ複合機に買い換えた。


買い換えて使ってみると、サイズもコンパクトになり仕事場の環境が良くなったと感じられるし、何よりもスキャンが早い。これは驚いた、旧機の場合、スキャン(PDF)したデータがPCに取り込まれるまで12分かかっていたと記憶しているが、新しい機械の場合、1520秒程度でPCにデータが取り込まれた。なんと言うことだ。「進歩」という言葉の意味を噛みしめた。


モノ、すなわち工業製品などの品質が長らく同じレベルにとどまるのが普通であった時代は、同じモノを長年大切に使うということが美しかったと思う。しかし、このようなスピードで品質の向上、イノベーションが成し遂げられる時代にあっては、「モノとの関わり方」の美しさというものが変わってきた。モノそのものは頻繁に買い換えることになっても、その材料のほとんどがリサイクルされ、環境の保持にも貢献するというあり方。これは、技術翻訳と関わっていたら、ここ数年の間にずいぶんと浸透してきた考え方であることはよくわかる。そのような内容の文書を何度翻訳しただろう。それでも少し『遠い』感じのしていた事柄ではあった。しかし、今回の複合機買い換えで、これをずいぶんと身近に感じた。




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