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2018年3月19日 (月)

【Maschinenübersetzung】  機械翻訳

Maschinenübersetzung(マシーネンユーバーゼッツング)(女):機械翻訳 …… 機械が行う翻訳。一部では実用化が始まっている。上手く使えば時短にもなり、経費の節減も可能であるが、そう簡単にはいかないと思われる。

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近頃
業界では機械翻訳についての話題が絶えない。きっかけとなったのはGoogle翻訳がニューラル翻訳のサービスを提供したことだろう。すなわちその出来映えがそれまでの機械翻訳と比べて格段に自然だったからだ。業界に身を置く者として、機械翻訳が幅広く実用化されているという実感はまだないが、業界は来たるべきニューラル翻訳実用化の時代に乗り遅れないようにするために、現在すでに可成り熱い状態になっているように思う。例えば業界団体の主催するイベントなども機械翻訳をテーマにしたものが多いし、業界誌にも機械翻訳に関する特集が増えている。おそらく今後は、ITや特許など紋切り型の文章が多く、行間を読む必要の少ない分野では機械翻訳を使用する機会も増え、機械翻訳+ポストエディットというコンセプトで翻訳物が生み出されることが増えてくると思われる。

わたしも試しに、ネットで見つけた英語の文をGoogle翻訳にかけてみた。できあがった訳文はなかなか自然な文体で驚かされた。しかし、何度か繰り返してみると、結構穴があるのもわかった。ネットで見つけたドイツ語の文を、同じくGoogle翻訳にかけてみたが、なかなか笑かしてくれた。すなわち、機械翻訳のシステムがどれだけ発達しても、そこにインプットされるデータの質が悪ければろくなものができあがらないと言うことだ。そして、使い方が悪ければ何の意味もなくなる。今のところ業界では「これから完成して行くであろうシステム」そのものへの関心が高いように見えるが、できあがったシステムをどう使いこなして行くかというところを考えて行かなければならないのではないかと思う。

システムがどんなに発達して良いものができても、インプットするデータがお粗末であれば、むしろ害になり得るというのは、翻訳メモリツールでも同じだ。ツール自体は良いものだ。用語集も活用できる、コンコーダンスサーチも利用できるので、翻訳内容の整合性も保つことができるし、作業時間もいくらか短縮できる。ただしこのれらの利点は「ツールを使いこなすことができる」という前提に立つ。そして、これらのツールの目的は、より良い翻訳物、すなわち、整合性があり、誤訳がなく、目的に合った文体を持つ翻訳物を、迅速に作成するためであって、「安く上げる」ためではない。翻訳メモリツールを使ってコストが下がるのは結果に過ぎない。極端なことを言えば「ただの偶然」に過ぎず、「コスト削減」というのは翻訳メモリツールを売るためのセールストークに過ぎない。これは、「上手く使えばコストを削減することも可能です」という程度のものだ。

例えば、ある企業が自社の製品を海外に販売するのでそのマニュアル等の文書をローカライズすることになったとしよう。ここで翻訳メモリツールというものをあまりに過信すると酷いことになる。このツールを使うと翻訳物が早くできると言われたのを鵜呑みにすれば、翻訳およびチェックあるいは編集工程に対して最低限必要な時間的余裕を与えないということに繋がり得る。そして最低限必要な時間的余裕が与えられなければ、成果物の品質は下がる。このような考え方をする企業は、当然値段も叩くだろう。すると、実際に翻訳を担当するのが、まだまだ実力の不足している駆け出し翻訳者になったり、徒に経験年数だけが長く内容がそれに伴わないセンスのない翻訳者になったりする危険がある。そういうジョブを請け負ってしまうような翻訳会社はきっとチェックも甘い。ブローカー的な業務フローが普通というエージェントであったりするかも知れない。結果として不適切な翻訳物が納品され、それがTMに残る。現場から抗議の声が上がり翻訳の手直しをするようなことになれば、時間も経費も却ってかかってしまう。英語の場合どうかは知らないが、これは特にドイツ語その他、英語以外のいわゆる「諸言語」の場合に顕著だと思われる。つまり、ドイツ語であるとするなら、翻訳会社のコーディネーターやチェッカーもドイツ語を使いこなすことができなくて、日本語を読むだけで判断するしかないということが多い。日本語を読むだけで翻訳物が信用するに足るものであるかが判断できる人もいるだろうが、それは誰でもできることではない。コーディネーターにも駆け出しの人はいるし、ベテランのコーディネーターでも得手不得手はある。そしてもしドイツに本丸のあるドイツ企業がドイツにある翻訳会社にローカライズを依頼し、そのドイツの翻訳会社が日本の翻訳会社に日本語へのローカライズを委託したのであれば(こういうことはよくあるのだ)、最終的に翻訳物に責任を持つはずのドイツの翻訳会社はおそらく日本語を使いこなすことのできるスタッフがいないために、数字とか記号とかのチェックだけを行ってクライアントに納品すると言うことになる。ツールを使った翻訳業務の経験のある人なら、この辺の事情は大抵、肌でわかるのではないだろうか。

このような「使い方」をするなら、せっかく翻訳メモリツールを導入しても、翻訳物の品質向上には繋がらず、効率も悪化し、その結果経費も増大する。この原因は、翻訳メモリツールを経費節減のためのソリューションだと勘違いしたことに他ならない。現在、翻訳メモリツールは可成り頻繁に使われていると思うが、それに関わるクライアント、エージェント、翻訳者、チェッカーなどがすべて、翻訳メモリツールのなんたるかを良く理解し、ツールに使われることなく使いこなすことができなければ、ツールの価値は半減する。機械翻訳にしても、どれだけニューラル翻訳が進歩して信頼できる翻訳を提供できるようになったとしても、ユーザーがそれをどう使うかによっては凶器にすらなり得るのではないかとわたしは思う

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